圏論勉強会用語集(1-3回まで)

圏論の勉強を進めるにつれて、単語が分からなくなってきたので、
自分の理解のために簡単な単語帳を作ります。
間違いがあるかもしれませんが、何かの参考になれば。

  • 圏(Category)

対象、射、合成からなり、以下の性質を全て満たすもの

    • 射が対象から出て対象に入る
    • 対象Aに入る射と対象Aから出る射は合成できる
    • 射の結合律が成り立つ。 f . (g . h) = (f . g) . h
    • 任意の対象に対して、恒等射1が存在する
  • 対象(Object)

圏の構成要素。点。圏を図示するとグラフになるが、そのノード。

  • 射(Arrow)

圏の構成要素。矢印。圏を図示するとグラフになるが、その有向辺。

  • 合成(Composition)

射f: A -> B, 射g: B -> C から、新たな射(g . f)を得ること

  • 恒等射

任意の対象Aに対して、恒等射1Aが定義できる。
恒等射1A: A -> A. Aをドメインとする射、コドメインとする射を(合成で)変えない。
1A . f = f (f: X -> A)。
g . 1A = g (g: A -> Y)。
なお、恒等射は一意。

  • (対象の)同型(isomorphic)

ある圏Cの対象A, Bに対して、AとBとの間に同型射が存在するなら、
(圏Cにおいて)AとBを同型であるという。

  • 同型射(isomorphism)

射f: A -> B に対して、射g: B -> A が存在し、
f . g = 1, g . f = 1 であるならば、
この射fを同型射と呼ぶ。

  • 逆射(inverse)

射fに対して、f . g = 1となる射gのこと。
g = f ^ (-1)と表記する。

  • 函手(functor)

圏Cから圏Dへの関数で、射と対象を次の制約の元で写すもの。

    • 射: 圏Cの射f: A -> B, g: B -> C に対して、F(g . f) -> F(g) . F(f)
    • 恒等射: F(1 _A) = 1 _F(A)

射を合成して写しても、写した後に合成しても同じ。
(圏Cの)対象Aの恒等射は、(圏Dの)対象F(A)の恒等射。

  • 双対圏(opposite category)

圏Cの射を逆向きにして得られた圏のこと。

  • 余- (co-)

圏Cで得られた概念を、双対圏から得たもの。

モナドは単なる自己函手の圏におけるモノイド対象」*1

  • モノイド

集合Mと、M上の二項演算*との組(M, *)であり、次の条件を満たすもの。

    • 結合率が成り立つ。 x * (y * z) = (x * y) * z
    • 単位元eが存在する。 e * x = x * e = x

誤解が無い場合は、単にMと表す。

  • 台集合(モノイド)

モノイド(M, *)において、Mのことを台集合という。

(関数の)定義域と値域が同じ集合である関数のこと。 f: A -> A

関数id: \x -> x を単位元、演算を関数合成とすれば、
Endomorphism(A, .)はモノイドとみなせる。 End(A)と表す。

モノイドからモノイドへの構造を保ったマッピングのことを
(モノイドの)準同型と呼ぶ。一般に写像は省略。
モノイド(M, *)からモノイド(N, **)への準同型Fは、

    • F(x * y) = F(x) ** F(y)
    • F(e*) = e** (各単位元)

を満たす。

  • 同型(モノイド)

モノイドM, Nに対して、準同型f: M -> N が存在するとき、
準同型g: N -> M が存在し、f . g = id _{M}, g . f = id _{N} であれば、
fをMからNへの同型射(isomorphism)という。
MとNとの間に同型射が存在するならば、2つのモノイドは同型であるという。

  • 部分モノイド

モノイド(M, *)に対して、
NがMの部分集合かつ、(N, *)がモノイドであるならば、
NはMの部分モノイドであるという。

  • 自由モノイド(Free Monoid)

ある関数i: A -> F(A)があり、
任意の関数f: A -> Mに対して、
f = f' . i となるようなモノイド準同型f'がただ1つに定まるとき、
モノイドF(A)を集合A上の自由モノイドであるという。

自由モノイドは同型をのぞいて一意である。

  • 群(group)

モノイド(M, *)に対して、
Mの任意の要素xに常に逆元yが存在する( x*y = y*x = e )ならば、
その(M, *)を群という。

  • 自己同型写像(automorphism)

(関数の)定義域と値域が同じ集合である"全単射の"関数の事。
集合上のAutomorphismは置換と同一視できる。

  • 自然変換(natural transformation)

※まとめ中
函手Fから函手Gへの変換関数。
函手は圏C -> Dの変換を行うもの。
Dの射: F(X) -> G(X) の集合であり、
Cの射f: A -> B に対して、オブジェクト・射の適用順序が可換なもの

  • 集合の圏(Sets)

対象: 集合、射: 関数、 合成: 関数合成、から成る圏。

数学用語。議論をする1つの空間の事を指す。
空間上には(今の)数学に必要なありとあらゆる集合が入っている。
単に集合と言った場合、現在議論している宇宙Uに属する集合の事を指す。

  • 小さい集合

宇宙Uの要素の事。
Setsの対象は小さい集合である。

  • グロタンディーク宇宙

圏論の作業を行う場合に常に固定しておく宇宙U

  • モノイドの圏(Mon)

対象: モノイド、射: モノイドの準同型、合成: 準同型の合成、から成る圏。

  • 圏の圏(Cat)

対象: 圏、射: 函手、合成: 函手の合成、から成る圏。

  • 離散圏

対象: 要素、射: 恒等射のみ から成る圏。

  • 前順序集合(圏論用語)

任意の対象A, Bの間に、AからBに向かって高々1つしか射が無い圏の事。
射: f: A -> B, g: B -> A はあってもよい。
(A, Bの間の所で、どちらかが先でどちらかが後、という2通りのケースがあるため)

  • 半順序集合(圏論用語)

前順序集合であって、任意の対象A, Bの間に向きを区別せずに
高々1つしか射が無い圏の事。

  • 0(圏)

対象も射も全くない圏のこと。
0から任意の圏への函手が1つのみ存在する。

  • 1(圏)

対象: 1つだけ、射: 恒等射のみ。
函手とあわせて、対象を射とみなすためなどに使う。

  • 2(圏)

対象: A, B、射: f: A -> B、恒等射のみ

  • 3(圏)

対象: A, B, C、 射: f: A -> B, g: B -> C, h: A -> C, 恒等射のみ

  • 積圏(product category)

圏CとDの対象の対、射の対を新たな対象、対として構成した圏のこと

  • 函手圏(functor category)

対象:圏CからDへの函手、射:自然変換、合成:自然変換の垂直合成、から成る圏

  • C1(1からCへの函手)

C1 = C (in Cat)

  • C0(0からCへの函手)

C0 = 1 (IN CAT)

モノイド(M, *)から単位元制約を抜いたもの。
つまり、演算がM上で閉じており、結合律のみ成り立つ場合の(M, *)を反群という。

...以下続行予定。

訂正

2013/6/6: hirataraさん、cさんのコメントによる指摘を反映。

*1:何か問題でも?